ペン先の種類と用途
ペン先の種類と用途
ペン先にインクをつけて書く「つけペン」は、ボールペンが普及する前から使用されていました。今では、主に漫画やイラストを描く道具として使われていますが、個性のある味わいのある手書き文字を書くために根強い愛好家がいます。
「つけペン」は、1897(明治30)年にゼブラが国内で初めて生産を始めました。生産品種は少なくなりましたが、今でも職人さんが1本ずつ手作りしているそうです。
元来ペンといえば古典的な羽根ペンのように「つけペン」のことを指すものでした。しかし、万年筆やボールペンなど頻繁にペン先にインクをつける必要のないペンが普及したため、今では「つけペン」と呼ばれています。
今日では頻繁にペン先にインクをつけなければならないため一般の筆記用に用いられることはほとんどなくなりました。
ペン先の種類により描線が帰られる漫画作品のペン入れや、美術作品としてのペン画、生物学の分類学における記載図の描画などに用いられています。墨汁や万年筆にいれて用いることが出来ないインクを使用しなければならない場合にも用いられます。
ほとんどのつけペンはペン先とペン軸とに分かれています。
それぞれの特性や好みで選択し組み合わせて使用します。ガラスペンはペン先とペン軸が一体化したものが多いです。丸ペンには専用のペン軸がありますが、それ以外のほとんどの金属製ペン先とペン軸は互換性があります。
昭和40年代初頭までは銀行や郵便局には、振込用紙の記入用にはボールペンではなくインク壺とつけペンがセットで備えられていました。
各ペン先ブランドの特徴
現在、日本のペン先ブランドは、タチカワ、日光、ゼブラの3種類です。日光はタチカワで製造していますので、実際にペン先を製作しているのは、タチカワとゼブラ社の2社だけになりました。
※ゼブラタマペン(かぶらペン)の製造販売は中止となりました。(2021年製造中止、2022年3月出荷中止)
ここでは株式会社立川ピン製作で製造している日光とタチカワについて解説します。両ブランドともに、さじペン、Gペン、丸ペンなど、ペン先のランナップを展開しています。最盛期にはさまざまなバリエーションがありましたが、長い年月の淘汰の結果、おおよそ似たランナップ構成になっています。それぞれのブランドの違いは、硬さになります。
硬さが異なる理由は、それぞれの素材と微細な設計の妙。あくまでもお客様からお聞きしたご意見の総論にはなりますが、タチカワの方が日光よりも硬めという評価をいただいています。つまり、自分の筆圧が強いと感じる方はタチカワ、手が疲れる方は日光といった具合に、自分のクセに合ったペン先を探してください。
タチカワピン製作所HP参照
ペン先の種類別の特徴
漫画に使われるペン先の種類は大きく分けてGペン、さじペン、日本字ペン、スクールペン、丸ペンの5種類です。ペン先選びは、線の太い細い、濃淡に直接関わりますのでお好みのペン先と出会ってください。
ペン先(つけペン)は、太い順にGペン、さじペン、日本字ペン、スクールペン、丸ペンになります。お気に入りの一本だけで描く漫画家もいますし、Gペンと丸ペンでメリハリをつけて描く漫画家もいます。
付ペン・ペン先の種類
サジペン
その形からカブラペン、スプーンペン(タチカワ)、タマペン(ゼブラ)、ドーム(ライオン)とも呼ばれます。※ブランドによって名称が異なっています。
硬く丈夫なため、均一な線が描けます。
若干の線の強弱(太い線、細い線)と均一な太目の線が書けるペン先です。ペン先を紙に沿って寝かせることで、線の強弱が出ます。
漫画を描くのにも利用されます。
◇現在のゼブラタマペン(かぶらペン)
ゼブラタマペン(かぶらペン)の製造販売は中止となりました。
(2021年製造中止、2022年3月出荷中止)
漢字や仮名 (文字) を筆記しやすいように鋼素材にスズメッキを使用し表面を半光沢(銀色:ニューム色)にしたニュームペン先があります。
ライオンニュームなどには愛好者が多いです。
⇒ ニューム色のペン先
日本字ペン
日本字が書きやすいようにカブラペンを特化させたものです。独特の形をしています。カブラペンよりしなやかな線が出せますが、その反面、強い弾力性には欠けます。
タチカワ日本字ペン
上下左右に書いても紙に引っかかりなく描け、クセがなく扱いやすいペン先です。太くもなく、細くもない、中間の線が書けます。ただし、線の強弱は付けられません。つけペン先独特のクセがないため、つけペンビギナーにもお勧めです! (タチカワの商品説明)
スクールペン
まっすぐでシンプルな形のペン先。硬いため強弱が付きにくく、均一な線に向いています。
上下左右に書いても紙に引っかかりなく描け、クセがなく扱いやすいペン先です。日本で簿記、帳簿用に開発されました。
Gペンとほぼ同じ形ですが、側面の切り込みがありません。線がGペンよりも細く硬いです。
ライオンスクールペンブッキー
⇒日光 NIKKO スクールペン NO.5 10本 B175
⇒ ライオンペンブッキー スクールペン B69a/b
⇒ ゼブラスクールペン 紙製グロス箱 B119
⇒ ライオンペンブッキー スクールペン B25
Gペン
もともと英字を書くのに使われたペンです。
ペン先の両側に切り込みが入っているため軟らかくて強弱をつけやすく迫力を出せますので、漫画、特に劇画に利用されてきました。
練習を積めばどんな線でもこのペンだけで描けるようになるそうです。輪郭から細部まで全ての描写をしてしまう漫画家もいます。
Gペンの「G」は、「昔はAペンからZペンまで作られていて、良質なGペンだけが今も使われている」とも言われますが確かではありません。
ライオンペン グース Gペン
ファルコンペン
今では製造販売されていません。
カブラペンに近いですが、少し硬質です。描き味が良くアクセントが付け易く、直線的な絵を描くのにもむいています。
猛禽の鳥ハヤブサのくちばしに似た大きなペンです。1970年代まで製造販売されていました。一時期、手塚治虫がカブラペンと共に愛用していた今では幻のペン先です。
丸ペン
本来はマッピングペンと呼ばれます。
地図の等高線を描くために利用されていました。
日本では丸ペン(まるぺん)と呼ばれ、ペン画や図面を描くのに利用されました。
丸ペンのメーカー・種類によって硬さが違います。
現在の丸ペンのメーカーは、日光、タチカワ、ゼブラです。
メーカーによってペンの硬さや線の細さ、使い心地等が微妙に違います。
ゼブラの丸ペンには、A(硬質)、E(軟質)があります。(Eは廃番となりました)
細い線が描けて、強弱も付けることができますので、Gペンと共に漫画を描くのにも広く利用されています。
体毛の先端が細くなる様を容易に描けますので、昆虫の分類学における記載図の描画に欠かせないと言います。
日光ペンとタチカワの丸ペンは、現在、鋼の種類、作業工程、焼き温度、焼きなまし温度すべて同じです。
ペン軸付きゼブラ丸ペン 3本
⇒ ゼブラ丸ペン No2586 36本箱入り B09
⇒ ゼブラスクールペン 紙製グロス箱 B119
⇒ 日光丸ペン軸1本と日光丸ペン10本
主要ゼブラペン先の特徴
セット販売されたゼブラペン先に同梱されていた説明書です。
ラウンドペン/ルンドペン
どちらも特殊文字、カリグラフィー用で基本的には同じ種類です。ブランドの違いやインクを留めるためのリザーバーの色の違いなどです。
ラウンドペンとルンドペン
どちらも特殊文字、カリグラフィー用で基本的には同じ種類です。ブランドの違いやインクを留めるためのリザーバーの色の違いなどです。
下の写真2枚は、日光ペンの展示箱です。かつて文具店で使われていました。
↑濃紺色のリザーバーが付いているものにラウンドペンと表示されています。
ラウンドペン・ルンドペンの歴史
日本鋼ペン先工業組合 平成8年7月 発行『ペン先のあゆみ』には、ルンドペンとしてペン先の幅が異なる2種類が掲載されています。↓
昭和初期の古いカタログにはラウンドペンの名称となっています。
次の3枚の写真↓
↑M. Myer's Round Writer Pens. 獨乙ペン 製圖用。音楽ノ繒用 と記載されています。ドイツからの輸入品です。
番号が大きいほどペン先は細くなっています。日光のラウンドペンセットと同じです。
↓1927(昭和2)年内田洋行カタログです。
ドイツ製の輸入品のラウンドペンが掲載されています。
↓こちらも1927(昭和2)年内田洋行カタログです。
TOYO SEIKO NIKKO MADAE IN JAPAN の文字が読み取れます。国産品です。
カリグラフィーに利用できます
calligraphyは、アルファベットの書道です。
専用のペンを使って美しいアルファベットを書く技術です。
ヨーロッパでは、お店の看板や表札など、街のいたるところで目にすることができます。歴史は古く、6世紀頃ヨーロッパに修道院ができ、写本が作られるようになったのが始まりといわれています。
やがて印刷技術の発達により写本はなくなりましたが、長い歴史の中でさまざまな書体がうまれました。
←熟練者が書くとこのように書けます。
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