2016.2.17読売新聞
2016.2.17読売新聞
太宰治ゆかりの「碧雲(へきうん)荘」が大分県由布市の由布院温泉に移築されることになりました。
由布院には下宿がよく似合う
東京から移築 太宰「人間失格」の原型執筆
保存が危ぶまれていた東京都杉並区にある、作家・太宰治(1909~48年)ゆかりの「碧雲(へきうん)荘」が、大分県由布市の由布院温泉に移築されることが、16日分かった。
昭和初期に所有者の自宅兼下宿として建てられた碧雲荘には、1936年11月から約7か月間、太宰が暮らし、代表作「人間失格」の原型「HUMAN LOST」を執筆。その後書かれた「富嶽ふがく百景」には、親しい人の裏切りを知った苦しい心情を回顧する中で「便所の金網張られた四角い窓から、富士が見えた」とつづっている。
約10年前まで下宿として使われていたが、2015年4月、福祉施設などの整備を計画した杉並区の土地開発公社が所有者から敷地のみを購入。戦前の東京郊外の文化を伝える高級下宿としての価値も高いとされる建物について地元の住民団体が区に保存と活用を求める署名を提出していた。
建物の所有者、田中利枝子さんによると、今年4月末までに更地にする契約のため、移築先を探していたが難航。取り壊しも考えていた昨年末、由布市で旅館を経営する橋本律子さんから「自分の所有する高台の土地に移築し、『文学の森』として活字離れを食い止めるイベントなどに使いたい」と申し入れがあった。
田中さんは、「大工の棟梁をしていた祖父がいい木材を使って建てた家。遠い場所にいくけれど、碧雲荘に思いを持ってくれていた人も喜んでくれたら」と語る。
既に10日頃から移築のための作業が始まっている
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