太宰治「女の決闘」昭和23年7月20日初版 C135
太宰治「女の決闘」昭和23年7月20日初版 C135
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太宰治は昭和23年(1948年)6月13日に山崎富栄と玉川上水に入水自殺しました。その翌月にこの短編集が新潮社から発行されました。新潮社版初版
「女生徒」「富嶽百景」「満願」「駆込み訴へ」「走れメロス」「ダス・ゲマイネ」の6編 この中の一編「走れメロス」は昭和30年代の中学校国語教科書に掲載されていました。
発行されてから70年超。強いヤケや汚れ、キズ、ほつれがあります。状態は良くないです。
太宰治「女生徒」の冒頭
あさ、眼をさますときの気持は、面白い。かくれんぼのとき、押入れの真っ暗い中に、じっと、しゃがんで隠れていて、突然、でこちゃんに、がらっと襖ふすまをあけられ、日の光がどっと来て、でこちゃんに、「見つけた!」と大声で言われて、まぶしさ、それから、へんな間の悪さ、それから、胸がどきどきして、着物のまえを合せたりして、ちょっと、てれくさく、押入れから出て来て、急にむかむか腹立たしく、あの感じ、いや、ちがう、あの感じでもない、なんだか、もっとやりきれない。箱をあけると、その中に、また小さい箱があって、その小さい箱をあけると、またその中に、もっと小さい箱があって、そいつをあけると、また、また、小さい箱があって、その小さい箱をあけると、また箱があって、そうして、七つも、八つも、あけていって、とうとうおしまいに、さいころくらいの小さい箱が出て来て、そいつをそっとあけてみて、何もない、からっぽ、あの感じ、少し近い。パチッと眼がさめるなんて、あれは嘘だ。濁って濁って、そのうちに、だんだん澱粉でんぷんが下に沈み、少しずつ上澄うわずみが出来て、やっと疲れて眼がさめる。朝は、なんだか、しらじらしい。悲しいことが、たくさんたくさん胸に浮かんで、やりきれない。いやだ。いやだ。
メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此シラクスの市にやって来た。メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿として迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。メロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。 ⇒続き 全文
私は、中学生の時に国語の教科書で「走メロスれ」を読んだことがきっかけで太宰ファンとなりました。60年前になります。
裏表紙の内側に、古書店で買い求めた時に付いていた値段票を剥がした跡があります。
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