太宰治「女の決闘」昭和23年7月20日初版 C104
太宰治「女の決闘」昭和23年7月20日初版 C104
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昭和23年7月20日初版発行
新潮社 定價百弐拾圓
太宰治は昭和23年(1948年)6月13日に山崎富栄と玉川上水に入水自殺しました。その翌月にこの短編集が新潮社から発行されました。
「女生徒」「富嶽百景」「満願」「駆込み訴へ」「走れメロス」「ダス・ゲマイネ」の6編 どれも私は大好きです。
発行されてから70年を超えています。強いヤケや汚れ、キズ、ほつれがあります。状態は良くないです。
太宰治「女生徒」の冒頭
あさ、眼をさますときの気持は、面白い。かくれんぼのとき、押入れの真っ暗い中に、じっと、しゃがんで隠れていて、突然、でこちゃんに、がらっと襖ふすまをあけられ、日の光がどっと来て、でこちゃんに、「見つけた!」と大声で言われて、まぶしさ、それから、へんな間の悪さ、それから、胸がどきどきして、着物のまえを合せたりして、ちょっと、てれくさく、押入れから出て来て、急にむかむか腹立たしく、あの感じ、いや、ちがう、あの感じでもない、なんだか、もっとやりきれない。箱をあけると、その中に、また小さい箱があって、その小さい箱をあけると、またその中に、もっと小さい箱があって、そいつをあけると、また、また、小さい箱があって、その小さい箱をあけると、また箱があって、そうして、七つも、八つも、あけていって、とうとうおしまいに、さいころくらいの小さい箱が出て来て、そいつをそっとあけてみて、何もない、からっぽ、あの感じ、少し近い。パチッと眼がさめるなんて、あれは嘘だ。濁って濁って、そのうちに、だんだん澱粉でんぷんが下に沈み、少しずつ上澄うわずみが出来て、やっと疲れて眼がさめる。朝は、なんだか、しらじらしい。悲しいことが、たくさんたくさん胸に浮かんで、やりきれない。いやだ。いやだ。
メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此シラクスの市にやって来た。メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿として迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。メロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。 ⇒続き 全文
私は、中学生の時に国語の教科書で「走メロスれ」を読んだことがきっかけで太宰ファンとなりました。60年前になります。
広告が載っています。太宰の死後、新潮社からこの「女の決闘」の他、「晩年」や「斜陽」などが相次いで発売されました。
最後の247と248頁に欠けキズがあります。
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