太宰治「八十八夜」昭和21年3月1日初版
太宰治「八十八夜」昭和21年3月1日初版

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昭和21年3月1日初版発行
南北書園 定價七圓
紙も貴重だった物質欠乏時代の戦後間もない昭和21年3月に35,000部が発行されました。文学、読書への庶民の渇望と太宰の人気が伺われます。

発行されてから75年になります。強いヤケ、汚れ、傷みがあります。
太宰の短編が収められています。
この短編集をこちらで読むことができます⇒国立国会図書館デジタルコレクション
「兄たち」の冒頭。太宰は青森の財産家の生まれでした。そういう家に生まれたことに太宰はコンプレックスを感じていたといいます。
父がなくなったときは、長兄は大学を出たばかりの二十五歳、次兄は二十三歳、三男は二十歳、私が十四歳でありました。兄たちは、みんな優しく、そうして大人びていましたので、私は、父に死なれても、少しも心細く感じませんでした。長兄を、父と全く同じことに思い、次兄を苦労した伯父さんの様に思い、甘えてばかりいました。私が、どんなひねこびた我儘わがままいっても、兄たちは、いつも笑って許してくれました。私には、なんにも知らせず、それこそ私の好きなように振舞わせて置いてくれましたが、兄たちは、なかなか、それどころでは無く、きっと、百万以上はあったのでしょう、その遺産と、亡父の政治上の諸勢力とを守るのに、眼に見えぬ努力をしていたにちがいありませぬ。たよりにする伯父さんというような人も無かったし、すべては、二十五歳の長兄と、二十三歳の次兄と、力を合せてやって行くより他に仕方がなかったのでした。長兄は、二十五歳で町長さんになり、少し政治の実際を練習して、それから三十一歳で、県会議員になりました。全国で一ばん若年の県会議員だったそうで、新聞には、A県の近衛このえ公とされて、漫画なども出てたいへん人気がありました。・・・・・

昭和21年3月1日初版発行 南北書園 定價七圓
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NO.0041 B123 210207